フェンスやブロック塀の設置を検討する際、意外と見落とされがちなのが「境界の確認」です。
境界があいまいなまま工事を進めてしまうと、完成後に隣地の所有者から「うちの土地に少しはみ出している」と指摘され、やり直しになるケースも実際にあります。
この記事では、外構工事の前に確認しておきたい境界の基礎知識と、トラブルを防ぐためのポイントを解説します。
境界の話は普段の生活であまり意識する機会がない分、いざ工事を計画する段階になって初めて戸惑う方が多いテーマでもあります。
「筆界」と「所有権界」の違い
境界には、法律上2つの考え方があります。
筆界
明治時代の地租改正の際に公図に引かれた線をもとにした、登記上の境界です。
「公法上の境界」とも呼ばれ、個人の合意だけで簡単に変更することはできません。
所有権界
土地の所有者同士が実際に認識している所有権の範囲を示す線です。
「私法上の境界」とも呼ばれ、当事者間の合意によって決まります。
多くの場合、筆界と所有権界は一致していますが、長年の慣習や過去の合意によって、実際の使用状況と登記上の境界が微妙にずれているケースもあります。
外構工事でフェンスや塀を設置する位置を決める際は、どちらの境界を基準にするのかを明確にしておくことが重要です。
なぜ工事前の境界確認が重要なのか
フェンスやブロック塀は、一度設置してしまうと簡単には動かせません。
境界があいまいなまま「だいたいこのあたりだろう」という感覚で設置してしまうと、後から測量した際に、実際の境界より隣地側にはみ出していることが判明する場合があります。
この場合、設置し直しの費用は基本的に自分側の負担になり、隣人との関係が悪化するリスクも避けられません。
以前の記事(フェンスの目隠し、高さの制限は?)でも触れた通り、フェンスは境界線から50cm以上離して設置するという民法上の基準もあります。
境界の位置そのものが不確かな状態では、この基準を守れているかどうかも判断できません。
境界を確認する方法
法務局で公図・地積測量図を取得する
法務局(または登記情報提供サービス)で、対象地の公図・地積測量図を取得することで、登記上の境界の位置を確認できます。
ただし、古い土地では地積測量図が存在しない、あるいは現況と大きくずれていることもあります。
境界標(境界杭)の有無を確認する
実際の敷地に、コンクリート杭や金属プレートなどの境界標が設置されているか確認しましょう。境界標があれば、それが境界の目印になります。
ただし、経年で紛失・移動している場合もあるため、確実な位置を知りたい場合は測量が必要です。
隣地所有者と立ち会って確認する
境界標の位置について、隣地の所有者と一緒に現地で確認し、双方が合意していることを書面(筆界確認書など)に残しておくと、後々のトラブルを防ぎやすくなります。
境界標が見つからない・不明な場合
境界標が見当たらない、あるいは過去の測量図と現況が食い違っている場合は、土地家屋調査士に依頼して確定測量を行うのが確実です。
確定測量には隣地所有者の立ち会いも必要になるため、時間と費用(数十万円程度が目安)がかかりますが、境界が明確になれば、その後の外構工事だけでなく、将来的な土地の売却時にも安心材料になります。
費用や期間は土地の形状・隣接地の数によって変動するため、複数の土地家屋調査士事務所に相談し、見積もりを比較することをおすすめします。
2023年の民法改正で変わったポイント
2023年4月に施行された民法改正では、隣地との関係(相隣関係)に関するルールが見直されました。
隣地使用権の明確化(民法209条)
境界付近の工事や境界標の測量のために、必要な範囲で隣地を使用できることが明確化されました。
ただし、事前に目的・日時・場所・方法を隣地所有者に通知することが必要です。
竹木の枝の切除(民法233条)
以前は、越境した隣地の竹木の枝を自分で勝手に切ることはできませんでしたが、改正後は、隣地所有者に切除を催告しても対応してもらえない場合や、所有者が不明な場合など、一定の条件下で自分で切除できるようになりました。
ただし、根については以前から自分で切り取ることが認められています。
外構工事の際、越境した木の枝やフェンスの一部が絡んでくることもあるため、こうした制度の変更も踏まえて対応を検討するとよいでしょう。
なお、根の切除はこれまで通り自分で行うことが認められていますが、枝についてはあくまで隣地所有者への催告など一定の手続きを経てからの対応が原則となる点は変わりません。
よくある越境トラブルの例
- 隣地の木の枝や根が境界を越えて伸びている
- 前所有者が設置したフェンスやブロック塀が、実際の境界より越境している
- 雨樋の落ち口が隣地上空にかかっている
これらは、境界確認を怠ったまま長年放置されてきた結果として発覚することが多く、外構工事のタイミングで初めて問題が表面化するケースも少なくありません。
現場でよく見る境界トラブルの実例
現場を見てきた経験から言うと、境界トラブルの多くは「悪意があって越境した」わけではなく、何十年も前に当時の所有者同士がなんとなく合意した位置に塀を作り、その後の世代交代で経緯が伝わらなくなっていた、というケースがほとんどです。特に、古い住宅地でブロック塀の交換や新設を検討する際に、以前の記事(危険なブロック塀の見分け方・ブロック塀の撤去費用の相場)で触れたような老朽化対応と合わせて境界を再確認したところ、実際の境界線とブロック塀の位置が10cm〜20cm程度ずれていた、という事例は珍しくありません。
撤去・新設のタイミングは、境界を見直す良い機会でもあります。
また、隣地との関係が良好なうちに境界確認を済ませておくことも大切なポイントです。相続などで所有者が変わった後に境界の話を持ち出すと、関係性がない状態からの交渉になり、話がまとまりにくくなることがあります。
現在の隣人と良好な関係を築けているうちに、境界標の確認や立ち会いを済ませておくことをおすすめします。
外構工事前のチェックリスト
- 法務局で公図・地積測量図を取得し、登記上の境界を確認したか
- 敷地に境界標(境界杭・プレート等)が実際に存在するか確認したか
- 境界標の位置について、隣地所有者と認識が一致しているか
- フェンスや塀を設置する位置が、境界線から必要な距離(民法上は50cm以上)を確保できているか
- 境界が不明確な場合、土地家屋調査士への相談を検討したか
これらを工事着手前に確認しておくことで、完成後のやり直しや隣人トラブルのリスクを大きく減らすことができます。
まとめ
外構工事でフェンスや塀を設置する前には、筆界と所有権界の違いを理解した上で、公図・地積測量図の確認、境界標の有無、隣地所有者との立ち会いなど、できる範囲で境界の状態を確認しておくことが重要です。
境界が不明確な場合は、土地家屋調査士による確定測量も検討しましょう。
工事後のやり直しや隣人トラブルを避けるためにも、境界確認は外構工事の計画段階で済ませておくことをおすすめします。


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